「あんた、足が遅いから恥ずかしい。いーっもビリだもの」という姉たちの冷たい言葉。
小学生の頃、運動会の徒競走で、私はいつも最後尾を走っていました。懸命に腕を振り、脚を早く動かしているにもかかわらず、友だちの背中しか見えません。運動会がなければと何度思ったことでしょうか。学校が燃えてしまったらいいのにと本当に思いました。スタート前の何ともいえないような気持ち、嫌でした。ゴールしてそのまま応援席に戻る足取りも重い・・・。
中学校では部活動は自由参加でしたから、入りませんでした。足は遅いし、運動は苦手だし、厳しい練習を見たらとても入る気になりませんでした。残念なことに、中学校でも運動会はありました。しかし、女の子の視線を気にするようになりましたから、学校から帰ったらせっせと走るようになりました。もちろん暗くなってからです。その効果があったのでしょうか、二年生で2位、最後の三年生で念願の1位になりました。
ただの運動会の徒競走でしたから、他の人からすればたいしたことはないのです。しかし、私にとってはすごいことでした。9年かかったのですから。家に帰って、姉に「1着になった」と報告をしました。反応は「ウソでしょう。誰も見てないんだから」でした。「ホントだって!」「じゃあ、紫のリボンは?」これはマズイことになった。(あの頃はリボンを付けてくれていましたから)私のクラスは学級旗にリボンを付けたので、手元にはないのです。
「ホントだって!」と声を大きくして言えば言うほど不思議なことにウソっぽくなってきました。なぜか知らないけど、顔は笑ってしまいました。まる子ちゃんのお姉さんのような冷静な言葉「だったら証拠を出してごらん」で、私の1着は家族の間で「ウソ」ということになってしまいました。
このことになると姉は涙を流すほど笑って、「アーアハハ!あんた、無理しなくていいから」です。近頃は、みんな歳をとったのか、「どっちにしても、たいした問題じゃない」です。