退職を機に、思い切って海外旅行に行きました。 北欧のフェリーに乗船して、夕日を見ていたときのことです。 そのときに、高校のときの英語の授業が頭に、うかびました。 
 ロシアの昔話を読んでいたときでした。 地主がある男に、期限内に歩いて囲んだ土地を安く売り渡す約束をするという話でした。 期限は日の出から日の入りだったと思います。 その男は作物を作るためにはこの土地が必要だろう・・・あの土地も必要だろう・・・と欲を出して広大な土地を歩いて囲みきります。 命がけの苦労をして期限内に出発したところにやっとのことで帰り着きます。 しかし、そのために命を落とします。 結局のところ、この男に必要だった土地は埋葬されるためのほんの少しの土地だったというものでした。
 終わりの部分を先生が模範となる訳をしたときに、質問(間違ってんじゃねえのという気持ちで)をしました。
「先生は太陽の下の端が地平線にかかってから、かなり時間があったように訳しています」
と軽くジャブを出しました。 これから、地学の授業で習った知識を使って、先生の訳を自分ではノックダウンをしてやったつもりでした。
 「太陽は24時間で見かけ上地球の周りを一周するから、1時間に15度動くように見える。 そして太陽の見かけの直径は角度にして30分(0.5度)です。だから、端が地平線にかかってから2分で沈んでしまう。」
と説明をして、
「ですから、・・・・と訳すのが正しいんじゃないでしょうか」
とストレートパンチを放ちました。
 日頃から、この先生にはやっつけられていたから、「やったね!」と心の日記には書いていたのです。 その後の展開は記憶にありません。
 あのときフェリーの甲板から眺めた夕日はなかなか沈まないのです。 とても長く感じました。 そのときに、浅い角度で地平線に入っているいることに気がつきました。 舞台はロシアだった! 季節も関係していたのかもしれない!・・・そうだったのか! あのときの自分に、パンチを食らわせたい気分になりました。 
 申し訳ありませんでした、A先生。