中学生のときだった。 いつものように、高千穂号で帰省した。 前回、間違えて一つ前の駅に降りてしまったので、慎重にデッキで「 K駅 」への到着を待っていた。 ある駅に停車した。 K 駅じゃないかなぁ・・・とは思っていたのだが、「アナウンスがない」」、「駅名の表示が目に入らない」ので降りなかった。 どこなんだろ・・って考えているうちにベルが鳴り列車が動き出した。 走り出したら、急に駅名表示が目に飛び込んできた。 反射的に飛び降りた。 飛び降りたというよりは、軽い気持ちで階段の最後の一段をポンと降りたつもりだった。 なぜか分からないが、ホームを転げた。 両手にバッグを提げていたので、ただ転げ回った。
何が起こったか分からなかったが、結果は想像にお任せします。 駅員さんが来て応急措置をしてくれた。 しかし、高千穂は車両編成が長いからホームからはみ出ていたので駅名表示は見えない。 また、アナウンスもなかった。 今なら、「どういうことか! 説明しろ!」って文句の一つも言ったのだが、中学生だし・・・黙って、駅を出た。
その後、高校の物理で慣性の法則を知り、「納得!」した。 自分にも落ち度があった。 ホームに対して自分は静止しているのではなく列車の速さで移動していたのだ。 自転車の二人乗りをしていて、後の荷台から飛び降りると転びそうになったのもそうだったんだ。 しかし、もう遅い。 二度目はなかった。
それにしても、列車とホームの間に挟まれなくてよかった。 オレ、意外と運がいいんじゃないか! 今も身体にはそのときの傷が残っている。 叔母さんが、「ムカデ油?」だったか、それを毎日塗ってくれたおかげでこの程度で済んだのだ。 病院にも行かなかったし、市販の薬にも世話にならなかった。 ムカデ油って、生きてるムカデを使った、天ぷら油漬けだと思う。 すごーく臭かったのはおぼえている。