「おい! 〇〇! 元気にしているか?」 突然、K先生から電話が掛かった。
私は九州に就職したので、しばらく連絡を取っていなかったのです。
「〇月にクラス会をやるから出てこい!」
卒業してから、かなりの時間が経ってるし・・・・ちょっと・・・。
「はぁ・・・・」と返事をして、行かなかった。
その後、「熊本に行くんだが、別府に一泊する。そのときに会いたいから、おまえ出てこい・・」
仕方なく、旅館まで出向いた。
先生は別府から熊本へと家族旅行に来ていた。
家族は別府のホテルに残して、先生は拙宅に招いた。
二十数年ぶりに会ったので、同級生のことやらで話が弾んだ。
担任をしていた生徒一人ひとりの動静をよく知っているのに驚いた。
そして一人ひとりのことを心配してくれていた。
私に「いやぁ、安心した。しっかりやれよ」と言って帰った。
昔、K先生は「鬼のK」と言われ、横着なこと言ったりすると、容赦なく「鉄拳」がとんできた。
しかし、理屈が通っていれば、私たちのような生徒が青臭いことを言って議論をふっかけても、怒ることなく相手をしてくれていた。
体育の時間、その日は水泳だった。みんなはバシャバシャ泳いでいた。
先生はプールサイドにいた私を見つけて、言った。
「〇〇! 泳いでないな。 全然濡れてないぞ!」
私はプールの水をバケツにくんで、かぶった。
「ぬれた!」
「しょうがねぇなあ」
「今ですか? 潜水もうまいし、相当上達しましたよ」
「それはよかった。オレはおまえのおふくろに海やらに行かせないように言ってあったからな」
あるとき、同級生のMと先生は真面目な顔をして何やらヒソヒソ話をしていた。
「何話してるんですか?」
先生はニヤッと笑って、「ン? 〇〇! お前には、全然関係のないことだ。心配するな」と答えた。
「あん?」
後で聞いたら、彼女のことを相談していた。
「あのとき? そんなことはないですよ。 ちゃんと、好きな子いました」
「誰だ?」
「◎◎さん!」
「あいつはまだ独身だ。クラス会に来るぞ」
もちろんクラス会に出席することになった。